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小説の虜

読書、小説執筆、日本語。

読書記1冊目 トマス・モア『ユートピア』

今日から、毎日最低一冊は本を読み、その感想を記していきたいと思います。

 

今日読んだ本はトマス・モア『ユートピア』。

 

ユートピア (岩波文庫 赤202-1)

ユートピア (岩波文庫 赤202-1)

 

 

※以下、ネタバレを含む可能性があります。

 

 

 

読書家としてまだ日が浅いので、本書以外で読んだことのあるディストピア小説を挙げよと言われても、伊藤計劃『ハーモニー』とジョージ・オーウェル『一九八四年』くらいしか思い当たらないです。

 

書評といえば、あらすじや要約をまず最初に示すのが通例ですが、ネット上に存在する数多の書評と同じことを書いてもしょうがないので、感想や意見だけを述べたいと思います。

 

本書で取り扱われているユートピア国、これは現在の価値観からするとユートピアではなくディストピアにあたるのではないでしょうか。確かにユートピア国は、潤沢な資源、手厚く保障された衣食住、発達した医療など、理想郷の条件を満たしてはいます。しかし、たった一度でも社会のルールから逸脱し、罪を犯してしまえば、一夜にして奴隷に早変わりです。奴隷には過酷な労働が待っています。

 

奴隷や罪人となり、苦しんでいる人がいる以上、それはユートピアではないですよね。もちろん彼らは望んでそうなったわけですから、自業自得かもしれませんが、真のユートピアを実現するとなったら、犯罪者の一人すら出してはいけないと僕は思うのです。

 

真のユートピアとはいったいどのような世界でしょうか。僕は、「お金や地位、精神や肉体に縛られることなく、誰もが自分のしたいことを自由にできる世界」と解釈しました。どんなものでも手に入れられる。どんなことにも挑戦できる。世界中のすべての本が読める。好きな人と結婚できる。誰もが自分の幸福を最大限に追求できる世界です。また、人間から一切の幸福を永久に奪ってしまう死は、これを完全に取り除く必要があるでしょう。

 

現在の人類では、このようなユートピアは到底実現できません。あれが欲しいと思ってもお金が足りず、あれに挑戦しようと思っても体力が足りず、世界中すべての本を読もうと思っても時間が足りず、あの人と結婚したいと思っても向こうがこちらを好きであるかは分からないし、他にもあの人と結婚したいと思っている人がいるかもしれません。

 

ひとつ考えたのは、人類一人一人に夢を見せることです。夢の内容は、その人が理想とする人生、思い描いているユートピアで、この夢が覚めることは決してありません。夢の中では上に挙げたような「したいこと」をすべて実現することができますし、それを止めようとする他人や社会は存在しません。頭に機械を取り付けられて、それぞれが永久の眠りについた人類が、どこか巨大な施設に整然と格納されているんです。まんまディストピアですね。

 

色々なことを考えさせられる本書でしたが、何より驚いたのは、これが1516年に執筆されたということです。五百年も前です。SF小説の古典とされているH・G・ウェルズの『タイムマシン』が1895年ですから、それよりも四百年近く前ということになります。最新刊ばかりを追うのではなく、こういった古典の名作も読んでいかなければな、と思うきっかけになった一冊でした。